秋の訪れ

自転車で走るのが好きだ。

自転車で走ると、ちょっとした季節の変化や、生き物の姿が目に飛び込んでくる。自動車は、もちろん人間の生活を格段に便利にしたと思うけど、その分失ったものも多いと思う。早く目的ににつく分、道のりで感じることもその分少なくなっているだろう。

 

自転車といっても飛ばしてしまってはあんまり意味がない。トロリトロリと、面白いものがあったら立ち止まってみて、写真でも撮る。

ゆっくりだと色んな風景が目に飛ぶ混んでくる。「あっ柿が熟し始めたな」「こんな花が咲いてる(名前はわからないけども)」と気づいたり、畑での野焼きに匂いがしたり。この前は、自転車でのんびりは走っているときに、古ぼけた公民館の裏手に、コスモス畑が広がっていることに気が付いた。もう少し行けば国道が通っているが、そこは人も全然いなくて、モズの声しか聞こえないくらい静かな場所。

車だったら絶対見落としている場所。隠れ家を発見したような気持ちになった。

 

生き物に出会うには、時間をかけて待つことが絶対大切だと思う。生き物が面白い行動を見してくれるのは、決まってゆっくり時間をかけて待っていた時だ。いつもと変わりない場所も、そこでゆったりと過ごしていれば、感動する瞬間に立ち会うことができる。

 

この間、近くの川をのんびり走っていた。いつものようにサギが佇んでいた。すごく近くの電柱に猛禽が止まっていた。「あートビやな」と思ったがよくよく顔を見たらノスリだった。「こんな近くにとまるもんなん!?」 本当に目と鼻の距離だ。慌ててカメラを出す。「ウイーン」とレンズを伸ばすが、すぐ「ウンウイーン」引っ込んだしまう。電池切れだ。「なんでや!」と一人で突っ込むが、画面は真っ暗なまま。

カメラはいつも、一番取りたいときに充電が切れている。

 

そのあとカラスが来て、ノスリと1メートル前ほどに止まった。完全に煽っている。がん飛ばしというやつだ。ノスリが飛び立ち、カラスも後を追った。その様子を、僕は肉眼で必死に眺めていた。

 

 

いまは、みんな忙しい生活にあって少しでも早く、たくさん、効率的に物事を進めようとする。でもたまには、ゆっくり季節を感じながら行くのも良いと思う。

そういった"空白の時間”を持てるのは、心と時間にゆとりがないとなかなか難しい。自分も、頑張りすぎているときとか、すごく効率主義的な考えになっているときはそういった時間がなくなり、そんな風に楽しむ余裕がなくなってしまう。季節の変化が全然感じれなくて、本当は楽しいはずのこともなんだか、無機質に感じてきてしまう。

 

「最近自分、ゆとりがないな」と心の奥で感じたとき、あえてそういった時間を作ると、とてもリフレッシュできることに気が付いた。人間、「量」の時間だけだはなく、「質」の時間を持つことは大事なのだと思う。

 

 

秋は、気候的にも一番いい時期だ。

満月の夜にベランダから顔を出し、涼しい風に吹かれながら、けなげになく虫の音色に耳を傾ける贅沢なときを味わって欲しい。